「ココロの鍵」
自分で考えたこととか、
一生懸命調べたこととか、
感じたこととか、
そんな湿っぽくって、熱くって、
時にとげとげしくて、ほんわかしてる、
そんなものが入っている私のココロ。
それをちょっとおいておいて、
「なんで、この人は心を開いてくれないんだろう。」
「この人は、きっとすっごい意地悪だ。」
なんて、目の前の人のことを考えていると、
私のココロの其処から、ノックの音。
「あのー、あけてくださーい」
「マスターキーはもちろんお持ちですよねー」
「今開けないと、遅れますよー」
今ってどういうことだろう。
よくわからないけれど、
手の中にあったじっとりしたマスターキーとやらを、
鍵穴にさしこんでみる。
サビついているのか、
相当苦労して重い鍵を回す。
おのおの、ため息をつきつつ、準備運動をして、
いつか見た綺麗な空色の調べを鳴らす特大ホルンだとか、
アメリカの真っ黒な海のように大迫力の大太鼓だとか、
石油のお値段的な右肩あがりのバイオリン弾きとか、
甘い香りのする皮バッグな調べのクラリネットとか、
アーカイブから読み取ったキーワードの、確信あるラッパとかが、
扉から出て、連隊を組み。
調子のよい音楽を奏ではじめる。
あの人に向かっていくマーチングバンド。
「あ、皆さん、あの、あの人はすっごい性根の悪い人ですから、
そんなに鳴らさないほうがいいと思いますけれども…えー、あのー…。」
私のおそるおそるの忠告はまったく無視され、
どんどん進む、賑々しいマーチングバンド。
それを率いる綺麗な着物をきたお姉さんが、
バトンのように、掲げているのは
私のマスターキー。
「それ、どうするんですか?ちょっと!私のココロ仕様でしたけれど…?」
あの人のココロの鍵穴に、すとんと入って、
バンドのみんなの調べに合わせてくるくる回る。
ぱちん。
ふわり。
あいた。
「あ、それ、もっとききたいなー。」と、
きらきらとココロの奥底の、
光や闇で彩られた目で、
あの人がいう。
「いや、それがさ!…」
と連隊をけしかける私も賑々しくなってきたぞ。
マスターキーは世界共通。
あの人のココロの鍵も、
私のココロの鍵も、
結局、私の手の中、閉めるのも、開けるのも、なんてことはない。
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